45歳からの暮らしの教科書

家族信託の費用はいくら?自分でできる?
相談前に知っておく7つの答え

最終更新: 2026年8月29日|45歳からの暮らしの教科書 編集部

親の認知症に備えて、家族でお金を管理する契約の仕組み——家族信託。名前は聞いたことがあっても、「費用はいくら?」「自分で作れる?」「何だか難しそう」で止まっている方がほとんどだと思います。

この記事では、専門家に相談へ行く前に知っておきたい7つの答えを、公的情報と公表されている料金をもとに整理しました。

なぜ今、家族信託なのか

認知症などで本人の判断能力が下がると、本人の預金口座は、本人の意思確認ができないため取引が大きく制限されます。いわゆる「口座の凍結」です。定期預金の解約も、実家の売却も、本人のためのお金なのに、家族が動かせなくなります。

全国銀行協会は、医療費など本人の利益が明らかな場合には家族の払い出しに応じるという考え方(2021年)を示していますが、これはあくまで例外的な対応で、原則は成年後見制度の利用です。

だから、元気なうちに備える。その選択肢のひとつが家族信託です。仕組みはシンプルで、登場人物は3人だけです。

委託者財産を託す人(例: お父さま)
受託者託されて管理する人(例: あなた)
受益者財産から利益を受ける人(=親本人にするのが一般的)
委託者=受益者(親が託して、利益も親が受ける)の形なら、託した時点で贈与税はかかりません。契約で決めた範囲なら、親が認知症になった後でも、受託者である子が預金の管理や実家の売却を進められます。

答え1: 初期費用の目安は「数十万〜100万円程度」

編集部が複数の司法書士・弁護士事務所の公表料金を調べた範囲では、内訳はおおむね次のとおりです(2026年8月時点・金額は目安)。

コンサルティング報酬信託財産の1%程度(最低30万円前後〜)
信託契約書の作成10万円台
公正証書化の手数料数万円(公証役場)
不動産がある場合信託登記の費用+登録免許税が加算

たとえば「預金3,000万円+土地2,000万円」を信託した場合の総額の目安として、80万円前後という試算を公表している事務所もあります。安くはありませんが、これは一度きりの費用です。財産の規模と不動産の有無で大きく変わるので、正確な金額は必ず見積もりで、内訳ごとに確認してください。

答え2: 毎年かかる費用は「基本ゼロ」

家族信託は家族が受託者になる仕組みなので、受託者への報酬を無報酬とする契約が一般的です。つまり契約後の毎年の費用は基本的にかかりません。

ただし、受託者を見張る「信託監督人」を専門家に頼む場合は毎月の報酬がかかります。ここが成年後見制度との大きな違いのひとつで、後見制度では専門職が選ばれると、本人が亡くなるまで報酬がかかり続けることがあります。

答え3: 自分で作ることは可能。ただし壁が2つ

法律上、家族信託の契約書を自分たちで作ることは可能です。ひな形の本も出ています。ただし実務には大きな壁が2つあります。

壁1: 銀行(信託口口座)

信託されたお金は、受託者個人の口座と分けて「信託口口座」という専用口座で管理するのが原則です。ところがこの口座の開設に、多くの金融機関が公正証書の契約書や専門家の関与を条件にしています。

壁2: 契約書の中身

次で説明する1年ルールや遺留分、税金への配慮が抜けた契約書は、後から家族信託そのものが崩れる原因になります。

判断基準はひとつ——「自分で作れるか」ではなく、作った契約書が銀行・法律・税務の3つの関門を通るか。

答え4: 有名な落とし穴、3つ

1年ルール受託者が受益権の全部をあわせ持つ状態が1年続くと、信託が終了する(信託法163条2号)。例: 父の死後、受託者の長男がただ一人の受益者にもなる設計だと1年で信託が終わってしまう
遺留分信託を使っても、他の相続人が持つ遺留分(最低限の取り分)への配慮は必要と考えられている。特定の子に財産を集める設計は争いの火種に
身上監護家族信託は財産管理の仕組み。介護施設への入所契約など、本人の身の回りの法律行為の代理はカバーしない(そこは任意後見の領域)

答え5: 任意後見との違いは3つ

家族信託任意後見
始まるタイミング契約したその日から判断能力低下後、家庭裁判所へ申立てて監督人が選ばれてから
裁判所の関与なし任意後見監督人が必ず付く(報酬あり)
守備範囲財産管理(柔軟)介護・医療の契約など身上監護を含む

どちらが良いか、ではなく、「財産は信託で、身の回りは任意後見で」と組み合わせる考え方もあります。

答え6: どこに頼むか

中心になるのは司法書士と弁護士です。不動産の登記までひとつながりで頼めるのは司法書士、家族間に争いの火種がある場合は弁護士。最近は家族信託専門の民間サービスも増えています。選ぶときの目安は3つ。

  1. 家族信託を何件手がけてきたか
  2. 信託口口座の開設に対応できる金融機関を知っているか
  3. 費用の内訳を最初から書面で示してくれるか

この3つを率直に聞いて、答えが曖昧なところは避ける。相見積もりを取ることも失礼ではありません。

答え7: いつやるべきか——「元気なうち」にしか、できない

家族信託は契約です。契約は、本人に内容を理解して判断する力があるうちにしか結べません。認知症が進んでからでは、家族信託も任意後見ももう選べず、残る選択肢は家庭裁判所が後見人を選ぶ法定後見だけになります。

この備えには「締め切り」があります。ただし焦って契約に走る必要はありません。最初の一歩は契約ではなく会話です。「もしもの時、お金の管理はどうしたい?」——親御さん本人の意向を聞くことが、すべての出発点です。

その「最初の会話」のきっかけに

口座・実家の名義・保険・お金の管理の備え。親が元気なうちに「聞いておくだけ」で済む10項目を、無料のチェックリスト(PDF)にまとめました。

無料チェックリストを受け取る

相談前の準備チェック5つ

  1. 財産の一覧——預金・不動産・保険。ざっくりでOK
  2. 目的をひとことに——実家を売れるように?生活費の管理?目的で設計が変わる
  3. 家族の合意——受託者にならない兄弟姉妹にも話を通す(飛ばすと後でもめる)
  4. 受託者の候補——誰が通帳を預かるのか
  5. 専門家に聞くことメモ——費用の内訳・1年ルールへの対策・信託口口座を作れる銀行

この5つが揃っていれば、初回の相談で話が一気に進みます。

動画でも同じ内容を15分で解説しています → YouTube「45歳からの暮らしの教科書」

出典・参考

・信託法163条2号(e-Gov法令検索) ・全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方」(2021年2月18日) ・任意後見契約に関する法律(e-Gov法令検索) ・費用は複数の司法書士・弁護士事務所の公表料金(2026年8月時点・編集部調べ)

※本記事は一般的な情報提供であり、法律・税務の助言ではありません。費用は財産の内容と依頼先で大きく変わります。実際の判断は司法書士・弁護士・税理士などの専門家に必ずご確認ください。